婚活をしていると、「実家暮らしの人はやめておいた方がいい」「自立していない」「結婚後に苦労する」といった意見を耳にすることがある。確かに、社会的な通念として「一人暮らし=自立している」「実家暮らし=依存している」という構図ができあがっている。
しかし、実際のところ「一人暮らしをした方がいいことはわかっていても、できない理由がある人」が存在するのだ。それは、単なる経済的な問題や精神的な甘えではなく、もっと深い“背景”を抱えているケースがある。
介護を理由に一人暮らしができない人たち
日本では少子高齢化が進み、介護を担う世代が確実に若年化している。厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2023年)によると、介護を行っている主な年齢層は「40~50代」が最も多く、全体の約44%を占めている。つまり、働き盛りの世代が親や祖父母、あるいは兄弟姉妹の介護を担っている現実がある。
一見すると「結婚適齢期を過ぎているのに、なぜまだ実家暮らしなのか」と思う人もいるだろう。しかし、その裏側には、親の介護、障がいのある家族の世話、通院の付き添いなど、見えない事情があるのだ。
私の職場にいる「実家暮らしの40代女性」

私の職場にも、40代でルックスもファッションも申し分のない女性がいる。清潔感があり、仕事もできる。明るく周囲とのコミュニケーションも上手い。だが、どこかに“影”があるように感じる瞬間がある。
彼女は実家で暮らしており、兄の介護をしているのだという。仕事中は笑顔で明るく振る舞っているが、帰り際に見せる疲れた表情に、ふと現実の重さを感じる。介護をしている人に共通しているのは、「誰かのために生きている」という気持ちと、「自分の人生を後回しにしている」という矛盾を抱えていることだ。
過去に付き合っていた男性がいたことも聞いたが、結婚に至らなかったのは“家庭の事情”が少なからず関係しているのだろう。恋愛感情があっても、介護という現実が立ちはだかることは少なくない。
介護がある人が「結婚できないわけではない」

ただし、誤解してはいけない。介護をしているからといって結婚できないわけではない。問題は「介護がある」という事実そのものではなく、「どう向き合うか」なのだ。
例えば、介護をしていることを隠す人もいる。理由は、「重いと思われたくない」「恋愛対象から外されそう」といった不安からだ。しかし、本当に信頼できる相手であれば、隠さずに話すことで理解してもらえる可能性がある。むしろ、人生の困難を共有できる相手こそ、長い目で見れば最良のパートナーになるだろう。
誰もが「介護する側・される側」になる未来

厚労省の統計によれば、65歳以上の人口は2024年時点で3,600万人を超え、全人口の29%に達している。日本人の約3人に1人が高齢者であり、今後ますます「介護をする」もしくは「介護を受ける」立場になる確率は高まる。
つまり、介護の問題は「他人事」ではない。今は元気でも、10年後、20年後には自分の親や配偶者、あるいは自分自身が支援を必要とする立場になる可能性がある。だからこそ、婚活の段階から「介護の現実」について考えておくことは重要なのだ。
婚活市場での「実家暮らし」への誤解
婚活アプリや結婚相談所では、「実家暮らし」というだけでマイナスに見られることがある。マッチングアプリの調査データ(Pairs調べ)によると、男性・女性ともに「実家暮らしの異性は恋愛対象にしづらい」と答えた人が全体の約62%にのぼる。
しかし、その理由を掘り下げると、「経済的に自立していないから」「親離れしていないから」というイメージが先行しているだけであり、実際の事情までは考慮されていない。実家暮らし=依存という図式は、現代社会の複雑な現実を反映していないのだ。
例えば、介護を理由に実家で暮らしている人は、家計的にも時間的にも一人暮らしが難しい。さらに、介護施設の人手不足や地域格差により、在宅介護を選ばざるを得ないケースも多い。そんな中で「なぜ一人暮らししないの?」と問うのは、背景を無視した偏見にも近い。
理解しようとする姿勢が“結婚力”を上げる
婚活では「条件の合う人を探す」ことばかりに目が行きがちだ。しかし、本当に大事なのは「相手の背景を理解しようとする姿勢」である。
例えば、相手が実家暮らしだったとしても、理由を聞けば「母親の介護をしている」「兄弟の支援をしている」といった事情があるかもしれない。そうした背景を理解し、寄り添おうとすることが、結果的に信頼関係を深め、結婚につながる可能性を高めるのだ。
逆に、相手の事情を理解しようとせず、「実家暮らしだから無理」と切り捨ててしまう人は、長期的なパートナーシップにも向かない傾向がある。結婚とは、単に条件を満たした人を選ぶ行為ではなく、「相手とどう生きていくか」を選ぶ行為である。
まとめ
「一人暮らしをしていない=自立していない」という考え方は、もう古い。経済的な理由、家庭の事情、介護など、現代社会ではさまざまな要因が人の生き方を形づくっている。
婚活において大切なのは、「一人暮らしかどうか」ではなく、「その人がどんな背景を持ち、どのように人生と向き合っているか」だ。相手の背景を理解することは、愛情の深さを測るリトマス試験紙のようなものだろう。
誰もが、誰かの支えになり、誰かに支えられて生きている。 一人暮らしができる人も、できない人も、そこにあるのはそれぞれの“現実”と“選択”である。 婚活を通じて出会う相手にも、その人なりの物語がある――それを理解しようとする姿勢こそ、最も尊い自立の形ではないだろうか。

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