今だから笑い話にできるが、当時は本気で信じかけていた。
あれはおよそ4年前のこと。コロナ禍が終息に向かい始めてマッチングアプリも浸透して出会いが活発になり始めた頃の話である。
私は当時、30代後半。付き合っていた彼女と結婚目前で破局した直後だった。
仕事にもやる気が出ず、心のどこかで「誰かに必要とされたい」という思いがくすぶっていた。私と結婚してくれる人がいるならば、全国どこへでも行こうと思っていた。
そんな時に出会ったのが、横浜在住の女性だった。
プロフィール写真は完璧だった

その女性のプロフィールには、まるでモデルのような写真が並んでいた。
清潔感があり、ナチュラルメイクで、背景には港町の風景。
「横浜在住、在宅ワーク、旅行が好きです。」
たったそれだけの自己紹介だったが、不思議と引き込まれた。
マッチして最初に来たメッセージは、「いいね、ありがとうございます😊」というシンプルな一言。
そこからの会話は驚くほどスムーズで、趣味の話、仕事の話、食べ物の話と続いていった。
違和感がない、むしろ理想的だった
彼女の返信は丁寧で、文章も自然。どこか教養を感じる内容だった。
「今日は商品を梱包して発送していました」と写真付きでメッセージが来る。
段ボールやテープ、作業机が写っており、まるで本当に在宅で仕事をしているようだった。
「今日はどこ行ったの?」と聞くと、
「友人と湖に行ってきました。空気が気持ちよかったです☕」と写真が送られてきた。
風景は確かに自然で、SNSで拾ったような不自然さも感じなかった。
そのため、まったく疑うことなく、私は彼女との会話を続けた。
1週間ほど経ったある夜、彼女が突然こんなことを言ってきたのだ。
「投資って、していますか?」
唐突だった。
普段は何気ない話ばかりだったのに、急に投資の話題を振られた。
「少しだけしてるよ」と私は答えた。
その頃、仮想通貨やFXが話題になっており、私も興味本位で小額の取引をしていたからだ。
すると、彼女はこう返してきた。
「私には先生がいて、その先生のおかげで毎日10万円ぐらい稼いでいるんです😊」
この一言で、少しだけ違和感を覚えた。
しかし、完全に否定するほどの警戒心はなかった。
当時の私はまだ、“人を信じたい”と思っていたのだ。
紹介された「投資サイト」
「もし興味があれば、その先生が使っているサイトを教えますよ」
そう言われて送られてきたのは、ある海外の投資サイトのURLだった。
そのサイトを開くと、リアルタイムで為替チャートが動いており、
一見すると本格的なトレーディングプラットフォームのように見えた。
「ここなら確実に稼げます。最初は私も怖かったけど、先生の言う通りにしたら本当に増えました!」と、彼女。
もうこの時点で、今の私なら「詐欺だな」と分かる。
だが、当時の私はまさかそんなことが自分に起こるとは思ってもいなかった。
Googleが警告を出した瞬間

興味本位で少し登録してみようと思い、メールアドレスを入力したが返信がない。なぜだ。
迷惑フォルダに振り分けられておりフィッシングメールだと警告してきたのだ。
ブラウザでサイトを調べてみると、、、
「このサイトは安全ではありません。個人情報を送信しないでください。」
心臓がドクンと鳴った。
Googleが警告を出すほどの危険なサイト。
冷静になって再び彼女のプロフィール写真を見返すと、どこかで見覚えがあるような気がした。
画像検索をしてみると――出てきた。
海外のモデルがインスタグラムに投稿していた写真とまったく同じだったのだ。
その瞬間、全てを理解した。
私は“投資詐欺”の入り口に立っていたのだ。
「恋愛詐欺」=ロマンス詐欺の手口

最近では「ロマンス詐欺」という言葉もよく聞くようになった。
SNSやマッチングアプリで親密になった相手が、最終的に「投資」「送金」「ビジネス」などを持ちかける手口だ。
このタイプの詐欺は、単なる金銭目的ではなく“心理的に相手を信じさせる”ことに特化している。
1日や2日で落とすのではなく、1週間、2週間と丁寧に信頼関係を築いてくる。
だからこそ厄介なのだ。
相手が外国人でも、写真が本物でも、言葉が自然でも油断してはいけない。
なぜ信じてしまうのか
人は孤独になると、わずかな優しさにも救われる。
たとえ見知らぬ人でも、毎日やりとりをしてくれるだけで安心感が生まれる。
「この人は自分のことを理解してくれる」
そう錯覚する瞬間があるのだ。
私もそうだった。
失恋の直後、仕事に追われ、家に帰っても一人。
そんな時に優しいメッセージをくれる人が現れたら、誰だって信じたくなる。
つまり、詐欺師は“心の隙間”を狙ってくる。
そして、その隙間に「投資」という言葉を滑り込ませてくる。
詐欺の見抜き方と対処法
この体験を通して学んだことをいくつか共有したい。
- プロフィール写真がモデル並みに美しい場合は注意。
画像検索をしてみよう。同じ写真が他サイトにあれば要注意。 - 会話の途中で「投資」「先生」「確実に儲かる」などのワードが出たら即ブロック。
世の中に“確実に儲かる投資”など存在しない。 - 動画通話やリアルな会話を避ける相手は警戒すべし。
顔出しを拒むのは、別人である可能性が高い。 - 感情を急激に動かしてくる相手も危険。
「運命」「出会えて嬉しい」「あなたしかいない」といった甘い言葉は警戒サイン。
恋愛とお金は混ぜるな
恋愛関係で一番危険なのは、“感情とお金を同時に動かすこと”だ。
特に、マッチングアプリでは「信頼」が可視化されにくい。
相手が本気かどうかを判断するには、直接会う・時間をかける・現実の生活を見る。
この3つが絶対条件だ。
「今だけ」「このチャンスを逃すと損する」と言われたら、
それは“詐欺のテンプレート”である。
結局、私は助かった

Googleの警告で踏みとどまった私は、その日のうちに彼女をブロックした。
数日後、その女性のアカウントは消えていた。
もしかしたら、他の誰かが同じように引っかかっていたかもしれない。
思い返すと冷や汗が出る。
まとめ
マッチングアプリは素晴らしい出会いの場である一方、
悪意を持った人間も潜んでいる。
「少しでも変だな」と感じたら、その直感を信じてほしい。
投資の話、ビジネスの話、送金の話――すべてスルーでいい。
恋愛は本来、心でつながるものであり、金でつながるものではない。
愛を語る前に、まずは“信頼を確認する”。
これが、マッチングアプリ時代を生き抜くための掟である。

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